「なんちゃってオリジナル」によるなんちゃってな話

私が調査してきて「オリジナル」を謳っているのにも関わらず「なんじゃそれ?」って思った事実をご紹介します。

フラッグサイズと型

まずは、印刷方法とサイズについて軽くおさらいしましょう。

フラッグを印刷するには、通常のオフセット印刷ではなく特殊な印刷方法を用います。多いのは「ダイレクトプリント」と「昇華転写」

ダイレクトプリント

「ダイレクトプリント」は、名前の通り生地に直接インクを吹きかけるのでオモテ面はかなり発色良く仕上がりますが、裏までインクが浸透しないのでウラ面はかなり浅い色合いになりますのでフラッグとしては使えません。

昇華転写

「昇華転写」とは、いわゆるアイロンプリントとほぼ同じ方法になります。これであれば裏まで浸透しますが、全体的に少し浅く仕上がります。また、転写機にインクで印字した後、プレス機で生地に2度の工程が必要で捨て紙などが多く発生するので結果的に単価は高くなります。

この2つの方法で言えば、昇華転写がフラッグに向いていると思います。実際、ほとんどの業者が昇華転写を採用しています。

サイズ

サイズについては、フラッグによく使用される種類の生地が縦幅100cmほど(必要余白含む)になります。これは、反物の幅がそれ以上ない物理的な話ですので致し方無いところではあります。

横幅は、理屈で言えば10mでも20mでも大丈夫です。ただ、10m20mまっすぐに印刷するのは大変難しいので、柄によって切れるところで切って、あとで縫い合わせた方が安心です。縦幅についても縫い合わせればもちろんフラッグサイズは大きくできます。

フラッグの型

で、「なんじゃそれ?」って思った事実についてですが、まずはフラッグの型について。

オリジナルと謳ってはいるものの、型が固定されている事はよくあります。例えば90cm x 130cmのアーチ(アーク)型で**円、85cm x 120cmのスクエア(長方形)型で**円といった具合です。

たとえレギュラーフラッグといってもチームによって希望するサイズや型はあると思います。そこが固定されては、使用する他のフラッグと違ってしまい作ったプリントフラッグだけ印象が変わってしまいます

オリジナルと謳っているのなら型も自由度があるのが本来のオリジナルであると思うのです。

縫い合わせ加工

また、一定のサイズ以上のフラッグを作りたい場合は、一般的に縫い合わせ加工を施してビッグフラッグを作るのですが、プリントフラッグのように柄が複雑な場合は、柄同士を合わせるのが大変難しく、結果、縫い合わせを断る業者がほとんどです

私も縫い合わせのプリントフラッグをしていますが、確かに業者でこれをするとなると加工担当の人が嫌がるのは分かります。裁断時点では柄が合うかとても不安になりますが、縫い合わせをしていって柄が合うとかなりの安堵感を毎回受けています。それもまた楽しいのですが、業者にはそんな余裕はありません。

成長できない料金設定

ここは、依頼者側には直接接しないところにはなりますが、予備知識としてはあった方が今後の依頼の際に役立つかと思います。

私が提供しているフラッグの料金は、一般的な業者と比べると比較的高価になります。これでも抑えている方ではありますが、なぜ高価に感じるかというと、それなりの事をしているからです。

それなりの事というのが「オリジナルデザイン」と「出力に最適なデータ作成」にありますが、その分利益が大きいかと言われると実際のところそうでもありません。より品質を高めるために必要な「研究費」を確保するためにも現在の料金設定になっています。

一方、「なんちゃってオリジナル」業者の料金設定は、ものすごく悲惨です。カツカツな料金設定で世に出してるため、「研究費」が出ずに結果的に品質やサービスも成長できないことになっています。

では、なぜそこまでカツカツにしてしまうのか。

他社からお客を…も、もちろんあるようですが、印刷会社の経営というのも私は強く影響していると考えています。

一般的には知られていないようですが、印刷会社は職人さんの集まりなんです。印刷技術については長けているところが多いのですが、経営に関しては、かなりお粗末なところもあります。前向きに進化を求める経営者であれば良いのですが、職人さん含む社員に任せっきりにしてしまっている経営者の下では悲惨な現場となっています。さらに印刷の職人さんがいない会社は目を覆いたくなる商品サービス、仕事環境、印刷経営となっているところもあります。

悲惨な現場の詳細は多々ありますが、私が印刷業界に感じるのは、20年前と比べると特に特殊印刷の業界の品質もこだわりも仕事環境も水準が下がってきていると感じています。

印刷会社の中でも「デザイン料無料」「配送料無料」などと、売り込みのためにあらゆる広告を出してきますが、実際のところデザイン料含む人件費や配送料も「無料」なんてあり得ません。必ず売上から消費されています。諸々引いて残ったのが、提供者が手にする利益となります。この利益から研究費として予算を当てる事で、より良い商品にするために試し刷りや新しいインクの導入などが可能になるわけです。

つまり、提供者が利益を望む理由のひとつに研究費の予算を獲得し、品質向上を目指し研究、より良い商品サービスの提供を継続的にするためである事がわかります。

しかし、この利益が少なければ「研究費」なんて予算は生まれません。安価で提供している業者はどうなるでしょう、提供者として品質向上は絶望的ではないでしょうか。

このように品質が上がらない状態でなんとか利益を出そうとするには、いわゆる薄利多売をしなければなりません。

こんな状態ですと人件費に関しても無理できず、まともなデザイナーを雇う事ができません。そうなると結果的にデザイン性もフラッグ技術もサービスも成長しない業界となってしまう訳です。

印刷会社とは別にフラッグ作成を売り込む仲介業者は、日本国内でも意外と多くいます。いますが、デザインに関しては詳しくない人が多く、印刷会社に品質の向上のための提案や研究開発するところはかなり乏しいのが現実です。

提供者が動けず成長しないとなると、結局依頼者側が動くしかないわけですが、印刷のことデザインのことはプロである者と比べたらやはり限界があります。

結局、「印刷ができる」というただ一点の強みを理由に自分たちでフラッグ商品を何とか売ろうと躍起になっているのが印刷会社になります。売るのは良いのですが、もう少し身の丈にあったサービス、そして何よりカラーガード業界の将来の事を考えて欲しいものですね。

なんちゃってエピソード1

あるところに面白い業者がいました。そこは、マーチングやカラーガードに携わっている人なら知っているくらい音楽競技に関連した事業をされているところです。

フラッグ印刷は、通常は反物から印刷してあとでフラッグの型に縫製するのですが、そこは逆で、フラッグの型になっている生地に印刷するといった方法のなんちゃってオリジナルを提供していました。

しかも自社では、印刷はおろか印刷オペレーターすらいない様子でした。なぜなら作られたフラッグには「Made in China」と大々的に印字している本当に大きなタグが付いていましたから^^;

さらに、フラッグの形にしてからフラット印刷(おそらく)するため、生地にシワが入りやすくなります。実物を見ましたが、やはりシワになって重なったところだけインクが綺麗に乗っておらず白い筋になってしまっていました。

ものすごく合理的と言うか廉価的と言うか。もちろん型も固定で反物の状態からの印刷なんかもできません。固定という事は、幅広い表現が作り出せない、融通が利かないという事になります。

オリジナルフラッグを作る前に…第三弾

でした。次回は、デザインデータの取り扱いについてもう少し見ていきたいと思います。

投稿者について

Color Guard Partner Reeset
代表/富田 學  Marching.Name/Chu-(ちゅう)

デザインとマーチング特にカラーガードのサポートを日々の仕事として活動中。
個人商店から中小企業へ事業におけるデザインアイテムの制作から運用アドバイス。これからデザイン系の仕事に就きたい人たちへのプライベートレッスン。
一般団体や学校内部活動のマーチングバンドへのビジュアルアドバイス、カラーガード専用デザインフラッグArt*Flagの制作・製造、チーム公式グッズの開発、定期演奏会用パンフなどイベントグッズの制作。

1995年/中部カラーガードセクションに入隊。BlueDevils instructor,Madisonscouts instructorに師事。2005年/Winter Guard 倭舞Second term。2006年/Yamato Drum & Bugle Corps YAMATO。2007年/Tokai Visual Arts team FAVORIS,その後デザインマネジメント事務所FAVORIS設立。

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